2015年 04月 30日
加齢と目の疲れ |
今日は、加齢によっておこる目の疲れの原因を探ります。
○眼精疲労ってどんな状態?
通常、目の疲れは休息することで解消しますが、休息をとっても目の疲れが継続する状態を「眼精疲労」と呼んでいます。眼精疲労では、目が疲れるだけでなく、目がしょぼしょぼする、物がかすんだりぼやけたりする、充血するなどさまざまな目の症状が起こります。
さらに、目以外にも肩こり、頭痛、吐き気、疲労感といった全身の症状を伴うケースが多いのが特徴です。
眼精疲労の原因は、大きく次のように分けることができます。
■目の問題・・・・近視、遠視、乱視などの矯正不良、老眼などの調節異常、ドライアイ、斜視やそのほかの目の病気やけがなど。
■全身・心の問題・・・・糖尿病、高血圧などの疾患、神経症などの心の病気、精神的ストレス、過労、睡眠不足など。
■環境の問題・・・・VDT(画面表示装置を備えたコンピューター機器)作業、合わない眼鏡やコンタクトレンズ、不適切な照明や空調などによる目の酷使。
慢性的な目の疲れがある場合は、検査をして内科的な病気や目の病気などがないかを調べたうえで原因を探っていくことが必要です。
○年をとるとなぜ目が疲れやすくなるの?
40代以降の人の疲れ目や眼精疲労の原因で最も多いのが、目の調節力(ピントを合わせる力)の低下による老眼です。
私たちはものを見るとき、距離に応じて水晶体の厚さを変えてピントを合わせています。この調節は、水晶体を支える毛様体が縮んだり緩んだりすることで行われます。しかし、加齢とともに水晶体が弾力を失って硬くなり、毛様体も衰えてくると、調節がうまくできなくなってきます。その結果が、近くが見えにくいという老眼の症状です。また、光の量を調節する瞳孔の働きも加齢とともに衰えてくるため、暗いところで見えにくく感じることもあります。
老眼は40歳を過ぎた頃から始まりますが、目の調節力の低下自体は、もっと若い年代から始まっています。しかし、40~50代での落ち込み方が最も急激なため、この年代が眼精疲労の症状を一番強く感じることになるのです。
30代以前でもVDT作業などで目を酷使することを続けていると、近くが見えにくい、物がぼやけるといった老眼に似た症状が現れることがありますが、この場合は生活改善などで回復するケースがほとんどです。
○加齢によって目も乾きやすくなるって本当?
涙液の分泌量は加齢とともに減少し、目が乾きやすくなります。分泌量の低下は40代くらいで最も顕著に現われるため、これが中高年の眼精疲労の大きな原因となります。女性の場合、40代後半から50代前半は女性ホルモンが急激に低下する更年期に当たりますが、目の乾きや目の疲れは、こうした更年期の症状として多い訴えのひとつです。
涙液が減って目が乾燥し、眼の表面が傷つきやすくなる病気は「ドライアイ」と呼ばれます。ドライアイは加齢のほか、長時間のVDT作業や運転、室内の乾燥、コンタクトレンズの使用、喫煙、過労、ストレス、抗うつ薬の副作用など、さまざまな原因で起こります。
中高年で特に注意が必要なのは、ドライアイの陰に全身的な病気が潜んでいるケースです。2型糖尿病や、シェーグレン症候群、関節リウマチなどの自己免疫疾患では、ドライアイの症状が強く出ることがあります。この場合は、原因となっている病気の治療が必要です。
VDT作業によるドライアイを防ぐには
パソコンなどの画面を集中して見つめていると、まばたきの回数が減り、涙の蒸発量が増えてドライアイや疲れ目が起こりやすくなります。また、ディスプレイを視線より上におくことで、眼の開いている面積が大きくなることも目が乾きやすくなる原因と考えられています。予防・改善のために、次のことを心がけましょう。
■意識的にまばたきを多くする。
■画面を視線のやや下方に設置する。
■画面の明るさを適切に調節する。
■机、いすの高さを調節し、楽な姿勢で作業ができるようにする。
■部屋を適度に加湿する。
■1時間につき10~15分程度の休憩をとる。
■目の乾きを感じたら目薬をさす。
○眼精疲労は目の病気も関係するの?
目の病気の中には、症状として目の疲れが出るものがあります。放置すると視力の低下を招いたり、最悪の場合は失明につながるケースもあるので、疲れ目ぐらいと軽視しないことが大切です。眼精疲労の症状を感じたときは眼科できちんと検査を受け、病気が見つかった場合は早めに治療を開始しましょう。
加齢に伴って起こりやすい代表的な目の病気には、主に次のようなものがあります。
■白内障・・・水晶体が加齢とともに白く濁る。程度の差はあってもいずれ全ての人に生じる。視力が低下し、日常生活に支障をきたした場合は手術が必要。
■緑内障・・・何らかの原因で視神経が障害され視野が狭くなる病気。眼圧の上昇がその病因の1つといわれているが、眼圧が正常な緑内障もある。
■加齢黄班変性・・・加齢により網膜の中心にある黄班に異常を生じる病気。視力低下が重症となった場合、回復が難しい。
■糖尿病網膜症・・・糖尿病の合併症で、目の毛細血管が傷害されて起こる。日本人の成人の失明原因のトップ。
気をつけたい糖尿病網膜症
糖尿病の人では「目が疲れる」「目がなんとなく重い」といった症状で受診し、糖尿病網膜症が発見されるケースがあります。一方で、自覚症状がまったく無いまま網膜症が進行してしまうことも多いので注意が必要です。糖尿病と診断されたら、食事療法と運動療法による血糖コントロールを行い、内科とともに眼科での定期検査を欠かさず受けるようにしましょう。
○疲れ目に効く目薬の選び方や使い方は?
一口に疲れ目に効く目薬といっても、いろいろな種類があります。次の例を参考に、自分の年齢や眼の症状にあわせて、最適なものを選びましょう。
■老眼が始まっている・・・目のピント調節機能を改善する成分や新陳代謝を促進する成分が多く含まれている目薬を。代表的な成分は、ネオスチグミンメチル硫酸塩、シアノコバラミン(ビタミンB12)、FAD(活性型ビタミンB2)など。
■パソコンなどのVDT作業が多い・・・ピント調節機能を改善する成分のほか、目を保護する成分(コンドロイチン硫酸ナトリウム)を多く含む目薬を。
■ドライアイの症状がある・・・涙と同じ性質を作る塩化カリウム、塩化ナトリウムなどや、目を保護する成分が含まれている目薬を。涙が少なく目の表面がデリケートになっているので、防腐剤の含まれていないものがベター。使いすぎると逆に乾燥を招くことがあるので、用法・用量を守ること。
目が疲れたときは温める?冷やす?
長時間パソコン操作をしたり、細かい字を見たりした後は、目が疲れやすいもの。そんなときは、目を温めると効果的です。熱めのお湯に浸して絞ったタオルや温めたアイマスクなどを両目の上に当てて、じんわりとパックしましょう。血行が促され、疲れがとれます。ただし目が充血しているときは冷やします。充血は目が炎症を起こしている状態なので、絞って冷やしたタオルなどを当てると目がスッキリします。
○目によい生活を送るには?
仕事の合間に適度な休みをとる、環境を見直すなどして目への負担をできる限り減らすとともに、全身の健康によい生活を送ることが大切です。過労、睡眠不足、ストレスを避け、疲れを感じたらリラックスして心身ともに十分に休ませるよう心がけましょう。
食事では、さまざまな食品から栄養素をバランスよくとった上で、老化防止に有効な抗酸化食品を意識的に摂るようにするとよいでしょう。
また、老眼鏡をかけずに無理を続けていると、疲れ目などの症状は改善されません。快適に過ごすために、老眼が始まったかなと感じたら、自分の生活スタイルに合ったものを早めに利用するようにしましょう。
抗酸化食品(参考)
ビタミンB群・・・レバー、マグロなど
ビタミンA・・・・小松菜、人参など
ビタミンC・・・・赤ピーマン、ブロッコリーなど
ビタミンE・・・・うなぎ、アーモンドなど
タウリン・・・・・貝類など
「季刊」セルフドクター より
○眼精疲労ってどんな状態?
通常、目の疲れは休息することで解消しますが、休息をとっても目の疲れが継続する状態を「眼精疲労」と呼んでいます。眼精疲労では、目が疲れるだけでなく、目がしょぼしょぼする、物がかすんだりぼやけたりする、充血するなどさまざまな目の症状が起こります。
さらに、目以外にも肩こり、頭痛、吐き気、疲労感といった全身の症状を伴うケースが多いのが特徴です。
眼精疲労の原因は、大きく次のように分けることができます。
■目の問題・・・・近視、遠視、乱視などの矯正不良、老眼などの調節異常、ドライアイ、斜視やそのほかの目の病気やけがなど。
■全身・心の問題・・・・糖尿病、高血圧などの疾患、神経症などの心の病気、精神的ストレス、過労、睡眠不足など。
■環境の問題・・・・VDT(画面表示装置を備えたコンピューター機器)作業、合わない眼鏡やコンタクトレンズ、不適切な照明や空調などによる目の酷使。
慢性的な目の疲れがある場合は、検査をして内科的な病気や目の病気などがないかを調べたうえで原因を探っていくことが必要です。
○年をとるとなぜ目が疲れやすくなるの?
40代以降の人の疲れ目や眼精疲労の原因で最も多いのが、目の調節力(ピントを合わせる力)の低下による老眼です。
私たちはものを見るとき、距離に応じて水晶体の厚さを変えてピントを合わせています。この調節は、水晶体を支える毛様体が縮んだり緩んだりすることで行われます。しかし、加齢とともに水晶体が弾力を失って硬くなり、毛様体も衰えてくると、調節がうまくできなくなってきます。その結果が、近くが見えにくいという老眼の症状です。また、光の量を調節する瞳孔の働きも加齢とともに衰えてくるため、暗いところで見えにくく感じることもあります。
老眼は40歳を過ぎた頃から始まりますが、目の調節力の低下自体は、もっと若い年代から始まっています。しかし、40~50代での落ち込み方が最も急激なため、この年代が眼精疲労の症状を一番強く感じることになるのです。
30代以前でもVDT作業などで目を酷使することを続けていると、近くが見えにくい、物がぼやけるといった老眼に似た症状が現れることがありますが、この場合は生活改善などで回復するケースがほとんどです。
○加齢によって目も乾きやすくなるって本当?
涙液の分泌量は加齢とともに減少し、目が乾きやすくなります。分泌量の低下は40代くらいで最も顕著に現われるため、これが中高年の眼精疲労の大きな原因となります。女性の場合、40代後半から50代前半は女性ホルモンが急激に低下する更年期に当たりますが、目の乾きや目の疲れは、こうした更年期の症状として多い訴えのひとつです。
涙液が減って目が乾燥し、眼の表面が傷つきやすくなる病気は「ドライアイ」と呼ばれます。ドライアイは加齢のほか、長時間のVDT作業や運転、室内の乾燥、コンタクトレンズの使用、喫煙、過労、ストレス、抗うつ薬の副作用など、さまざまな原因で起こります。
中高年で特に注意が必要なのは、ドライアイの陰に全身的な病気が潜んでいるケースです。2型糖尿病や、シェーグレン症候群、関節リウマチなどの自己免疫疾患では、ドライアイの症状が強く出ることがあります。この場合は、原因となっている病気の治療が必要です。
VDT作業によるドライアイを防ぐには
パソコンなどの画面を集中して見つめていると、まばたきの回数が減り、涙の蒸発量が増えてドライアイや疲れ目が起こりやすくなります。また、ディスプレイを視線より上におくことで、眼の開いている面積が大きくなることも目が乾きやすくなる原因と考えられています。予防・改善のために、次のことを心がけましょう。
■意識的にまばたきを多くする。
■画面を視線のやや下方に設置する。
■画面の明るさを適切に調節する。
■机、いすの高さを調節し、楽な姿勢で作業ができるようにする。
■部屋を適度に加湿する。
■1時間につき10~15分程度の休憩をとる。
■目の乾きを感じたら目薬をさす。
○眼精疲労は目の病気も関係するの?
目の病気の中には、症状として目の疲れが出るものがあります。放置すると視力の低下を招いたり、最悪の場合は失明につながるケースもあるので、疲れ目ぐらいと軽視しないことが大切です。眼精疲労の症状を感じたときは眼科できちんと検査を受け、病気が見つかった場合は早めに治療を開始しましょう。
加齢に伴って起こりやすい代表的な目の病気には、主に次のようなものがあります。
■白内障・・・水晶体が加齢とともに白く濁る。程度の差はあってもいずれ全ての人に生じる。視力が低下し、日常生活に支障をきたした場合は手術が必要。
■緑内障・・・何らかの原因で視神経が障害され視野が狭くなる病気。眼圧の上昇がその病因の1つといわれているが、眼圧が正常な緑内障もある。
■加齢黄班変性・・・加齢により網膜の中心にある黄班に異常を生じる病気。視力低下が重症となった場合、回復が難しい。
■糖尿病網膜症・・・糖尿病の合併症で、目の毛細血管が傷害されて起こる。日本人の成人の失明原因のトップ。
気をつけたい糖尿病網膜症
糖尿病の人では「目が疲れる」「目がなんとなく重い」といった症状で受診し、糖尿病網膜症が発見されるケースがあります。一方で、自覚症状がまったく無いまま網膜症が進行してしまうことも多いので注意が必要です。糖尿病と診断されたら、食事療法と運動療法による血糖コントロールを行い、内科とともに眼科での定期検査を欠かさず受けるようにしましょう。
○疲れ目に効く目薬の選び方や使い方は?
一口に疲れ目に効く目薬といっても、いろいろな種類があります。次の例を参考に、自分の年齢や眼の症状にあわせて、最適なものを選びましょう。
■老眼が始まっている・・・目のピント調節機能を改善する成分や新陳代謝を促進する成分が多く含まれている目薬を。代表的な成分は、ネオスチグミンメチル硫酸塩、シアノコバラミン(ビタミンB12)、FAD(活性型ビタミンB2)など。
■パソコンなどのVDT作業が多い・・・ピント調節機能を改善する成分のほか、目を保護する成分(コンドロイチン硫酸ナトリウム)を多く含む目薬を。
■ドライアイの症状がある・・・涙と同じ性質を作る塩化カリウム、塩化ナトリウムなどや、目を保護する成分が含まれている目薬を。涙が少なく目の表面がデリケートになっているので、防腐剤の含まれていないものがベター。使いすぎると逆に乾燥を招くことがあるので、用法・用量を守ること。
目が疲れたときは温める?冷やす?
長時間パソコン操作をしたり、細かい字を見たりした後は、目が疲れやすいもの。そんなときは、目を温めると効果的です。熱めのお湯に浸して絞ったタオルや温めたアイマスクなどを両目の上に当てて、じんわりとパックしましょう。血行が促され、疲れがとれます。ただし目が充血しているときは冷やします。充血は目が炎症を起こしている状態なので、絞って冷やしたタオルなどを当てると目がスッキリします。
○目によい生活を送るには?
仕事の合間に適度な休みをとる、環境を見直すなどして目への負担をできる限り減らすとともに、全身の健康によい生活を送ることが大切です。過労、睡眠不足、ストレスを避け、疲れを感じたらリラックスして心身ともに十分に休ませるよう心がけましょう。
食事では、さまざまな食品から栄養素をバランスよくとった上で、老化防止に有効な抗酸化食品を意識的に摂るようにするとよいでしょう。
また、老眼鏡をかけずに無理を続けていると、疲れ目などの症状は改善されません。快適に過ごすために、老眼が始まったかなと感じたら、自分の生活スタイルに合ったものを早めに利用するようにしましょう。
抗酸化食品(参考)
ビタミンB群・・・レバー、マグロなど
ビタミンA・・・・小松菜、人参など
ビタミンC・・・・赤ピーマン、ブロッコリーなど
ビタミンE・・・・うなぎ、アーモンドなど
タウリン・・・・・貝類など
「季刊」セルフドクター より
by wph-sigino
| 2015-04-30 14:00
| 眼・鼻・口